2010年08月07日

013:刀の手入れ

■拵え交換(1)
〜鞘の仕立て〜


 剣武天真流では真剣を用いての稽古は三段からと定められておりますが、実のところ、天真流のそうしたとりきめとは関係なく、以前から日本刀を所持しております。
 これまでの文中で触れましたように、私は稽古暦の入口が合気道であったため、剣を振るということが稽古の一部でした。
 後に新体道に移ってからは棒術と空手を平行して学んでまいりました。これらは合気道でいう剣と体術の関係に相当するため、私にとってはごく自然な──というより、どちらかを欠いては稽古が成り立たない、不可分なひとつの体系です。

 空手・棒術を稽古のメインにすえるようになり、剣の必要性はほとんどなくなってしまったのですが、どうにもそこは理性や必要性の問題ではなく、原体験として大切だったものはそうそう捨てられるわけではないもののようです。その後も変わらず剣を懐かしく想い続けておりました。

 しかし必要もない上、習うあてもないまま剣だけ欲しがるというのも、これはこれで非常にいびつな印象があります。
 要はずっと悶々としていたということです。

 そんなある日、学生時代の合気道部の友人に「凄い先生がいるんだ」と誘われ、紹介してもらったのが黒岩洋志雄先生でした。
 先生の示してくださる剣・杖(ジョウではなく、ツエ)と体術は、非常に明快で、他に類を見ないほどの高い合理性を感じました。何としてもこの合理性を自分の身体で表現できるようになりたい、そんな情熱がこみ上げてくるような体系でした。

 そこで俗物の私は「ああやっと素晴らしい剣とご縁が出来た。これは本腰を入れて高い密度で取り組まねば」と、嬉々として真剣を購入したのでした。懐事情もあり、実際に購入したのは先生とお会いしてから数年後のことです。

 そのとき購入しましたのが、こちら。
 
 P8070517.JPG
 
 中身に惚れたので構わないとはいえ、いささか味も素っ気もない拵えです。
 購入から数年が経ち、鯉口の修理などして延命に延命を重ねてまいりましたが、どうにもこのところ劣化の感が否めません。

 P8070518.JPG
 (栗形から鯉口にかけて質感の違うのが修理の跡)

 柄(ツカ)も、妙に短いのが気になります。
 
 P8070521.JPG
 (左:真剣/右:居合刀※)

 ──と、そろそろ装いを着せ替えてあげたいところです。
 以前(006項)にも触れましたように、ずいぶん以前から突兵拵にあこがれていたのですが、今こそその時のようです。
 しかし──

 この愛刀を購入したころ、突兵拵の名も知らず、たどたどしく先輩の拵えの特徴を伝え、いずれはそのようにしたいと告げた私に、銀座の骨董屋さんはこう言いました。
(古)「それをやった人は大分モノが分かっているけど、趣味人だね。その拵えを作るとしたら、刀と同額くらいは覚悟しとかないと。」
 ──と。
 鐺(コジリ)だけで3万〜8万──愕然とするような値段です。
(古)「まあ欲しがる人も多いしあまり出ない品なんだけどね。入ったら取っておこうか?」
(私)「………結構です」
 内心涙をのむ思いで丁重にお断りしました。
 
 しかしそれから数年、つい先日、突兵鐺は6,300円で手に入りました。同じく半次郎鍔は8,400円。
 念のために申し添えておきますと、骨董屋さんはボッてもなければ足元を見ていたのでもありません。
 骨董屋の仕事は骨董品を扱うことで、歴史的価値のない新造品が、取り扱い範囲外だっただけなのでした。
 あとは、持ち込みの金具を取り扱いながら鞘を新調してくれる、可能な限り割安な業者をあたるばかりです。

 そうして発注から約ひと月。出来上がりましたのが、こちら。

 P8070519.JPG
 P8070520.JPG
 
 低予算にも関わらず充分に丁寧な仕上がりで感謝しています。ですが低予算とはいえ刀の世界のことですので、お父さんの懐は限度いっぱい──拵え全部は到底まかないきれません。
 
 というわけで、今度は柄巻きだけでなく、柄そのものを自作することにあいなりました次第です。

 いつもにも増して前段が長くなりました。本題は次回、柄の自作作業の様子です。


※…模造刀、模擬刀、居合刀と、いずれも同じものです。ニセモノ臭い語感から粗略な気持ちが湧かぬよう、稽古に際し、天真流では真剣でない練習用の刀を居合刀と呼ぶことにしております。
ラベル:剣術 道具
posted by 秋山勇浩 at 23:48| Comment(0) | 剣術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月12日

006:刀の手入れ

■柄巻き

 昨夏(2009年)から立ち上がりました剣武天真流
 そろそろ練修用の居合刀(合金製)の柄巻が汚れてまいりました。手入れは心がけているのですが、黒い柄糸に、手脂のテカリや、白い粉(塩分?)が噴いてたいそう見苦しい。ので、巻き替えです。

 ちなみに居合刀購入時に好みの柄巻にと思いましたら+3万円の見積りでしたが、当然断念してノーマル購入だった経緯があります。その懐ろ事情は今でも変わりませんし、預けている間は稽古にも差し支えます。
 聞けば昔のお侍さんは、汚れた柄巻きをあらためて新年を迎えたそうですが、貧乏武士などはいちいち柄巻師に預ける金もなく自分で巻き替えていたようです。器用な侍ばかりではなかったはずですから、このくらいはやれば出来るはず。そして幸い、今日びはたいていのことはWebで調べがつきます。
 これからも何かと出費のかさむであろう剣術稽古ですから、節約可能なところは可能な限り節約するつもりです。


 で、購入したのがこちら。4mで4,000円弱。
 01(柄糸).JPG

 昔、先輩に無駄を排した姿が非常に美しい突兵拵の指し料を見せてもらって以来、ずっと皮の柄巻にあこがれていましたので、これを機会に皮に替えます。ただし、表皮ですとツヤの美しさと引き換えに、夏場の稽古では汗で滑る危険性が激増するそうですので、バックスキンを使うことにしました。
 もっとも、柄糸でバックスキンと呼ばれるものの多くは表皮にヤスリがけをしたもので、正しくは「スリ皮」というそうです。本当の裏皮はザラザラすぎて手触りが今ひとつの模様ですので、私もこの「スリ皮」を求めました。巻く前から非常に気持ちよい手触りです。
 

 柄を外し、目釘など失くさぬようマスキングテープでひとくくりに。
 02(分解).JPG


 柄巻師などは専用の目盛を作っているようですが、面倒なので現代の利器・コピー機を使用。
 一瞬でコトが済みます。
 03(コピー).JPG


 柄頭の結びをほどくと、もう後戻りは出来ません。
 04(ほどき).JPG


 菱紙(巻きの形を整えボリューム調整する三角の詰め物)がまた、製作が面倒なので、ほどいたのを再利用するつもりでしたが、この分ではちょっと無理そうな感じです。
 05-1(菱紙).JPG 05-2(菱紙).JPG


 Web上で、ゴムシートから型抜きした菱ゴムの使い勝手が良好だったという情報を確認。しかし2,000円ほどもするので、近所のホームセンターでテープ状の「スポンジゴム」を購入。198円也。
 06-1(菱ゴム).JPG

 06-2(菱ゴム).JPG 06-3(菱ゴム).JPG
 

 カシュー(人工漆※)で鮫皮部分を塗装します。
 鮫皮といっても要は魚の干物。フカヒレじゃありませんが、乾いていればコチコチでも、水で戻せばクニャクニャになってしまうそうです(だからこそ加工可能なのですが)。
 手汗の湿気対策と、巻きの不ぞろいを誤魔化す保護色とで一石二鳥の工程です。
 カシュー700円。刷毛は80円、溶剤で洗っても乾くとコチコチになるので刷毛は使い捨ての安物で充分。
 07-1(カシュー).JPG 07-2(カシュー).JPG
 

 出来上がり。手触りは最高の一言です。愛着もひとしお。
 08(完成).JPG
 

 柳生よろしく逆目貫にしてみました。
 09(逆目貫).JPG

 目貫のふくらみが掌にフィットし手溜りがよくなるという文をどこかで目にしたので試してみたのですが………どうも何の足しにもなりません。残念ながら私にとってはまったくの無意味でした。こうなると、定法に安っぽく反発しているかのようで痛々しいだけです。_| ̄|○
 こんな柄の真横に掌のくぼみがはまるような握りで刀が扱えるとは到底思えないので、デマか、振ったことのないコレクターの発言だったのではないかと思料されます。

 目釘の頭が装飾性を持ち、いつしか刀装具として分離・独立したのが目貫だそうですが、一説に、「邪魔だから指に当たらぬようずらした」のが今の定位置だとも聞きます。私としてはこの説に一票を投じたいところです。
 そんなに邪魔なら廃すればよさそうなものですが、こういう洒落っ気を残そうとする人情味が、刀に機能美+αの魅力を与えているようにも思えます。度を越すと鼻につきますのが塩梅の難しく、そして面白いところなのかもしれません。

 あえて目貫を逆にしておく意味もないので、今度巻き替えるときにはスタンダードな位置に戻すこととしましょう。が、しばらくはこれで稽古です。

 次回はまた空手の話に戻ります。


※カシュー…"人工"漆とはいいますが、原料は化学合成ということもなく漆科のカシューという樹木由来。カシューナッツでおなじみのカシューだそうです。意外でした。そのへんのホームセンターで入手可能な上に扱いが簡単です。
ラベル:剣術 道具
posted by 秋山勇浩 at 01:12| Comment(1) | 剣術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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