2018年06月13日

160:虎走りとダイラタンシー効果(1)



「虎走り」という走法が、居合にある。

足踏みのような小走りで前進して一撃、という技法で(まあググってみてください)、奥伝かそれに近い高度な技法と位置付けられていることが多いようです。曰く、逃げる敵を追いかけて仕留めるのだそうだが、正直なところ…


「いやいやいや。必死に逃げる敵を小走りで追い込むのはどう考えても不可能でしょ」


…というのが長らく、第一印象からつい先日までの感想であった。
おそらく口には出さずとも内心では100人が100人、そう思っていたに違いない。そうでない人がいたらぜひ自説を聞かせていただきたい。

ところが先日、偶然にも全く無関係の技術系の読み物(※)を眺めていて「ダイラタンシー」という流体の奇妙なふるまい、性質が目に止まった。
日常的なところでいうと、水溶き片栗粉をぎゅっと握ると固体のように変化しヒビ割れさえ生じるのに、握りを緩めると液体に戻って手のひらを流れ落ちるあの現象である。

さっそく検索してみたところ、Youtube上に面白い実験があったので紹介してみたい。

『底なし沼を歩いてみよう!(ダイラタンシーの原理)』
ゆっくり歩くと足が沈み、急に引き上げようとすると瞬間的に硬化して足が抜けなくなり、小走りであれば沈まないという興味深い現象が起きており、動画の終盤には、虎走りと非常に似通った動作が見られる(43秒付近から)。

………これなんじゃねぇの?

結論は以上。次回、あらためて考証してみます。


※読み物…技術書ではなくもっとライトなもの。興味はあってもそこまで頭脳明晰ではないので。
posted by 秋山勇浩 at 22:59| Comment(0) | 稽古 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月21日

156:短刀のサバキ・膝のこと


つい先日のNHKニュースに次のような一文がありました。
「JAFによりますと、時速60キロで走行中、くしゃみを1回する間に計算上はおよそ8メートル進んでしまうということで、この際に進行方向や運転操作を誤ることなどが、事故の原因になる」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180301/k10011347801000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_022

時速60キロ=分速1キロ=秒速16.67メートルですので、くしゃみ1回8メートルというのは、逆算すると約0.5秒ほどと想定しているようですね。
「へくしッ」だとそれくらいかもしれませんが、「ふぁ…っくしょん!」だと余裕で1秒くらいはかかりそうです。そうすると16〜17メートル。恐ろしい距離です。

これに対して人の拳というのは字面の上では意外なほど遅く、ボクサーのパンチでも時速30kmほどだそうです。
ドライバーの感覚だとかったるいくらいの安全運転のようですが、しかしそれでも秒速8メートル強もあります。
ジャブならその移動距離は肘肩の屈伸と腰や胸の返しと踏み込みの合計でせいぜい数十センチほどですから、基点から目標まで0.1秒を軽く下回るタイムで到達することになります。
まあ確実に人の生理的な反応の限界を超えており(※)、見て避けられるものではありません。だからボクサーはしきりに上体を振って的を散らすことで被弾率を下げるのでしょう。

短刀を手にした暴漢がそこまで訓練された身ごなしをしていたらもう考えたくもない脅威ですが、ちなみに素人とボクサーとでパンチの速度には倍近い開きがあるようで、したがってパンチの専門家でない人間の持つ短刀は、おそらくは時速20キロほどを想定していれば、相当程度までさばけるのではないでしょうか。
あくまで当て推量ですが。

といっても、仮に時速20キロだとしても秒速なら5メートル強。数十センチの距離ならばやはり0.1秒強で到達してしまいます。
ここでJAFも冒頭で言っているように「この際に進行方向や運転操作を誤る」ことなどが「事故」につながるのですから、「この際」すなわち「0.1秒強」の間の挙動の適・不適が明暗を分かつと考えてよいでしょう。

田中光四郎先生は稽古中しきりに「歩くな!」と注意をされます。
セットで飛んでくるのが「膝を落とせ!」というお叱り。
日子流は膝の落としがキモであり大前提であり、中でも短刀のサバキはそれがよりシビアに求められます。

なぜなのか。

片膝を落とせばその瞬間に腰がきれ始める。正面から見て身体の中心が移動する。――全ての技は、その初動の上に成り立っております。
一方、股関節から始動する通常の歩行では腰の変化が非常に小さく、中心の移動は、カカトの着地→ツマサキの着地……が完了したさらに後になります。時間でいえばほんの少しの差でしかありませんが、そのわずかな時間に短刀が深刻なほどの距離を突き進んでくることは上に述べた通りです。
もちろん、膝を落としたからといって成功が約束されるわけではありません。しかし落とさず歩けば、その刹那に数十センチの確実なロスが生じてしまうのです。
その差が大きいのだ……とは従前から思ってはいましたが、ふとした記事からこうして計算しなおしてみると、あらためて教えの重要さを痛感させられます。

ふだんとてつもなく優しい田中先生がこのときばかりは厳しくお叱りになるのは、その数十センチのロスというリスクが教え子の身にふりかからぬようにという、これもやはり優しさなのだと私は考えています。

短刀.JPG
(上段:一般的な稽古用のゴム製ナイフ。下段:日子流の稽古で用いられる短刀。もちろん刃はついていませんが、新宿スポーツセンターの利用ルール上、第1武道場(畳)では使えません。周囲への安全配慮のため上段のゴム製ナイフを用いて稽古しております。)


日本陸上競技連盟競技規則 ― 第3部 トラック競技 ― 第162条 スタート ― 6.不正スタート……において、反応時間0.100秒未満が不正スタート(いわゆるフライング)とされている事実は、たとえトップアスリートであれそんな速度で反応出来る人類はいない、ということのひとつの証左でしょう。
「だから″読み″が大切なのだ」という意見は大いに賛成ですが、読めても動きが遅ければ意味はありません。したがって読めても読めなくても、とりあえず膝だけは反射的に落ちるよう訓練しておくべきだと考えられます。
少なくとも武器に対しては。


posted by 秋山勇浩 at 18:17| Comment(0) | 稽古 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

154:3月の予定 〜臨時のお休み〜


新宿スポーツセンターでの稽古について。

3/5(月)…お休み(本部にて海外からの来客対応のため)
3/12(月)…19:00〜
3/19(月)…19:00〜
3/26(月)…お休み(休館日のため)

posted by 秋山勇浩 at 00:34| Comment(0) | 稽古 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする